シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2016年06月06日

新・シマとの対話~第27話「レガシー」

写真・桑村ヒロシ

2016年8月28日、夏。
現代版組踊『鬼鷲―うにわし―』の公演が決まった。
今月6月1日よりチケットの予約受付も始まった。

今回の「鬼鷲」公演には現代版組踊の先駆をきる意味で、
目指すべき3つの大きなチャレンジがある。

1つ目は、国立劇場おきなわ公演の実現、
2つ目はくるちの杜100年プロジェクトとのコラボ企画の実現、
そして3つ目はスペシャルゲストが奏でる音楽と
沖縄の中・高生達との競演が実現するという挑みである。

1999年に誕生した現代版組踊は
「肝高の阿麻和利」をはじめ、
全国で10を越える団体が地域毎に、
独自の活動を展開しているが、
立ち上げに関わった一人である僕は、
2011年(平成23年)の沖縄県庁での公職に就いたのを機に
全ての演出や指導、
監修も含め現場の一線から一時期遠ざかった。

後継の育成や本来依って立つ地域のサポーターを中心に
新たな機軸を創出して貰いたい思いからである。

その甲斐あって、
2013年7月には「現代版組踊推進協議会」が設立され、
この取り組みは「組踊」と言う沖縄の伝統文化を基調としながらも
全国にその裾野を広げ続けている。

一方で依って立つ地域がない舞台作品も存在する。
依って立つ地域が「無い」と言うよりは
「依って立つには広域過ぎる」と言った方が良いかも知れない。
例えば舞台「鬼鷲」がそうである。

琉球三山を統一した全琉的偉人のはずの尚巴志は、
ある意味、全県的存在であるがために埋没していた。
勿論
陽の目を見なかったのには歴史的にも様々な思惑があったわけだが…
詳しい話しは舞台の中で語るとして、

いずれにしても現場を離れていた僕が
また再びの演出という場所に戻ってきたのには
僕なりの使命を感じたからであった。

ある先輩舞台人は
「世界に同じ演出家は二人いらない!」と豪語していた。
またある人は
「先駆的な生き方こそリーダーの異名である!」とも。

僕はこれらの考え方に激しく共鳴する。
「世界に一つしかない作品を目指す」
「常に時代の先を疾走する」ことは全ての出来事を主体的に捉え、
自発能動的に発想することから始まる。

物事に対して「主体的」に向き合うことで課題は価値に、
ピンチはチャンスに、
鎖は根っこに変わっていく。

つまり「我が使命の自覚」こそ、
何よりも尊重しなくてはいけないものであり、
自覚した「命」はその通りに「使」わなくてはならないのである。
中国のグランドマスターも言っていたではないか
「前に進むことだけを考えて止まることを考えるな」と。

前略 南ぬシマジマ

2005年8月の阿麻和利公演以来、
現代版組踊作品は国立劇場おきなわでの
舞台上演をしていない。
理由の一つは端的に
「新たな挑戦」が成されてこなかったからだろうと考える。

元来
伝統芸能の殿堂と呼ばれる国立劇場において
青少年文化団体の利活率はほとんどない。
子どもが主役の舞台としては敷居が高いとも揶揄され、
その為11年前の中高生による「阿麻和利公演」は
全国的にも画期的と評された。

人は「器」に合わせて成長していくモノでもある。
11年が経過した今回も、
若々しい感性もそのままに「国立劇場」と言う
大器の上で果敢に挑戦する出演者に期待して貰いたい。

歴史は過去の遺産ではなく
古くて新しい「今も生きる物語」なのである。

 (南島詩人/平田大一)


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毎月1日15日に隔週で連載していきます!
 どうぞお楽しみに!!

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Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 16:14