シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2015年11月15日

新・シマとの対話~第15話「星がみている」

写真・桑村ヒロシ

週明けの月曜日は、早い朝から目が覚める。
抱えた舞台の構成や新しいアイディアが
浮かんでは消え、消えては浮かび
胸のマグマが鳴り止まず
深呼吸しても治らない

朝、4時過ぎに目が覚めて
まんじりと一人
思索の迷路に立ち尽くす。

思いきって朝早く家を出た。
まだ明けきれない午前5時55分、
4階の階段踊り場から夜空を見上げたら
不思議な光景‥
月と金星と星々の神秘的な整列。

冷んやりとした風が背筋をシャンとさせる
ちょっと身震いしたのはその風のせいか
それともこの身体を貫く静かな感動のためか‥。

天啓のようにある偉人の言葉を思い出す。
「チャンスは、準備した心に訪れる」

ああ、まさに!
誰もがまだ寝床の中で過ごすこの時間の思索を
積み重ねての日々の中から
新たな発想は生まれ出る。

その苦悩から逃げない覚悟を持てということか。

高村光太郎は詠う。

    おれは知らない、
    人間が何をせねばならないかを。
    おれは知らない、
    人間が何を得ようとすべきかを。
    おれは思う、
    人間が天然の一片であり得ることを。
    おれは感ずる、
    人間が無に等しい故に大であることを。

     火星が出てゐる。

高村光太郎の詩 「火星が出てゐる」
の冒頭は、そして、こう言う書き出しだった。

     要するにどうすればいいか、という問いは、
     折角たどった思索の道を初めにかへす。


前略 南ぬシマジマ

何も心配しなくてもいい。
星はみている。

明けの明星、
夏の天空にスコーピオン、
冬の風に冴えるオリオン、
そして、深き夜の底で孵化する新月。

誰もがまだ知らない午前5時55分。
4階階段の踊り場でまだ「何でもない」
このちっぽけな僕を、

星がみている。


風が吹く。
朝がもうすぐ!
そこまで来ている。

冷たい風が嬉しかった。

   (南島詩人/平田大一)


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毎月1日15日に隔週で連載していきます!
 どうぞお楽しみに!!

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Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 20:45