シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2015年09月15日

新・シマとの対話~第11話「KBG84」



島で暮らすおばーちゃん達で結成した
「小浜島ばーちゃん合唱団」は、
1993年から島のボランティアグループ「うふだき会」が支援する
平均年齢84歳、最高齢97歳の奇跡のグループで、
通称「KBG84(ケイビージー・エイティーフォー)」と呼ばれている。

自らで語るそのキャッチコピーもシュールで、
「天国に一番近いアイドルユニット!」と言うから
もはや怖いもの知らず。

今年10月にはCDデビューも決まり、
プロモーションビデオが完成
目下の目標は「紅白歌合戦出場!」とのこと。
急がねばならない、時間との勝負だ!

CD用の収録を終えたばかりのメンバーに、
「今日の歌の調子はどうでしたか~?」
と聞くテレビの若いインタビュアーに向かって
合唱団リーダーの花城キミさん90歳の、
「はっさ!もうヤバい!」の一言には
正直、凄すぎて目まいがした。

「生きる」達人はその一挙手一投足が、感動そのものだ。

先月、旧盆の帰省の際に島に帰った僕は、
ひょっこり花城キミばーちゃんを訪ねた。

久しぶりの訪問を嬉しそうにニコニコ笑いながら、
「たいち!有り難うね~。あんたのおかげだよ~!」と、
最近のこの大活躍ぶりをそう言ってくれた。

島のお年寄りは僕のことを「たいち」と呼ぶ。
濁点が発音しづらい上に「だいいち」と言う「い」が、
二つ続く本名は呼びづらいらしく「たいち」となった。
親父もそう呼んでいたのだから苦笑する。

今から20数年前。
実家の小浜島が活動拠点であった僕は、
当時70歳になったばかりの花城キミさんに
オリオンビール6缶でスカウトされて、
「うふだき会」のボランティアスタッフになった。

何のことはない大好きな三線を片手に流しよろしく、
歌うおばーちゃん達の伴奏を弾いては、
その場を盛り上げるちょっとした島のマスコット的
存在としてお手伝いしていたわけで、
当時、僕が中心で手掛けていた「小浜島手作り音楽祭」と言う
地域おこしイベントにて参加するべく初年度に
「島のおばーちゃんファッションショー」を企画、
意を強くした次の年から「島のおばーちゃん合唱団」を結成したことが
そもそものきっかけだった。

面白いことに歌を重ねていく度に、
記憶の底から昔懐かしい曲まで思い出してきたりして、
瞬く間におばーちゃん達の表情が生き生きしだしたから不思議だ。

1999年3月、僕が演出家としての本格的なシゴトをするために
沖縄本島に渡るギリギリまで濃密なその活動は続いていた。
そうして島を離れた後、僕の役割を担ってくれた島在住、
シンガーソングライターの「ツチダキクオ」氏の頑張りで、
合唱団は徐々にその活動の幅を広げていったのである。

2013年9月、取り組みは大きく変化する。
地域文化の発展に寄与した団体に贈られる
「サントリー地域文化賞」を受賞、9月20日の
沖縄タイムス紙面には、前日の贈呈式で惜しげもなく踊る
おばーちゃん達の笑顔の写真と記事が眩しく掲載された。

「元気いっぱいで笑顔あふれる活動と、それを支える島の敬老文化」
が、受賞決定の理由だと読んで納得した。
記事はこう続く。
「定期的な昼食会から合唱団に活動を広げ、
島内だけではなく県内外での舞台発表を続けている。
入団式はウエディングドレスで着飾ることが恒例になっている。
明るく地道な活動が高く評価された。」

そして記事の最後の一行はこう締めくくられた。

「県内の個人・団体受賞は2010年の
『肝高の阿麻和利(うるま市)』以来、8件目」と。

…僕は、不思議な感慨の中に一人いた。


前略 南のシマジマ

僕は自分の活動で自慢出来ることが一つある。
それは係わった全ての取り組みが
例え僕がそこにいなくなった今でも
「継続」していることである。

肝高の阿麻和利
ゆいゆいキッズシアター
オヤケアカハチ太陽の乱などの舞台活動はもちろん、
小浜島手作り音楽祭は「ちゅらさん祭り」と名前を変えながら
キビ刈り援農塾の意思は「小浜島ファーム」と言う別団体の誕生に息づき
そして「ばーちゃん合唱団」も結成から20年が経過した。

看板の名前が多少変わっても、運営する組織のカタチが変わっても
産声をあげた瞬間をともに過ごした仲間達の手によって
今も運営されていることに僕は素直に感謝したい。

そして、活動が継続する理由を自分で自分に問うてみた。
まず、一年一年の活動に一回一回の達成感と喜びがあるからだと言う
理由が一つ、そしてもう一つは、「始まりの時の勢い」が
その後の継続には不可欠であること、
スタートダッシュの熱量が何よりもモノを言うのかもしれないと言う
シンプルで単純明快な答えが浮かび上がってきた。

心が奮えると人はその胸中に「磁力」を宿すものなのかも知れない。
「マグネット」には、「N」と「S」の両極あって、
言わば「引きつける力」と「発する力」の
その両方があるから「継続力」を発揮するのかもしれない。
地域活性化とはその「継続する力」に掛かっている。
「継続力」は始まりのエネルギーの延長にあることを
忘れてはならないのである。

天国に一番近いアイドルユニット「KBG84」。
「平均年齢84歳」の全く新しい地域おこしの取り組みは
今日も文字通りの「体をはった、命がけのパフォーマンス」で、
全国のお年寄りに大きな夢を発信し続ける。

そのスタートに係われた自分を、僕は誇りに思う。

   (南島詩人/平田大一)

写真・桑村ヒロシ

YouTubeでは、平田大一さんの肉声で放送中!

毎月1日15日に隔週で連載していきます!
 どうぞお楽しみに!!

書籍版『シマとの対話【琉球メッセージ】』
書籍版『シマとの対話』が販売中!
南島詩人・平田大一と桑村ヒロシ(KUWA)の写真が
コラボレーションした、情熱と感動の作品集!!(在庫僅少)

書籍版『シマとの対話【琉球メッセージ】
文:南島詩人・平田大一 / 写真:桑村ヒロシ(KUWA)
出版:ボーダーインク
発売日:好評発売中!
価格:¥1500(+税)
※通販でも販売中!

→ http://borderink.shop-pro.jp/?pid=15119540




Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 23:43