シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2009年10月16日

シマとの対話〜第Ⅱ章その10『気づきのスイッチ』

Photo_KUWA
5年前の講演会で
「日ごろ、どういう指導をしているのか?」
と訊ねられたことがある。
演出家として、指導者として、リーダーとして…
「どうすれば、みんながああいう風に言うことを聞くのか」と。

また別の会場では
「そういう発想はどうして生まれるのか?」
とも聞かれたことがある。
作家として、島人として、地域活性化のアドバイザーとして…
「無から有を生み出すコツとは何なのか」と。

ある方からは
「悩みがなさそうで良いですね」
と真顔で告げられたことがある。
先輩として、スぺシャリストとして、夢想家として…
「その原動力はどこから来るのか」と。


でも。
そのとき僕は、上手く答えきれなかった。
否!
今でも自問自答してしまうのだけれど、
不思議なことに「答えきれなかった“問い”」は
意外と憶えているものなんだ。

簡単そうで出てこない答えを探しては
出口を見つけることが出来ないことの繰り返し
何かの拍子にその“問い”をまた思い出しては
「なぜだっけ?」
と、自問自答することの繰り返し。


この間、つい先日。

本番直前の舞台稽古を見ていて感じた「違和感」
その「違和感」に正直になって舞台に立つ演者に
「訳は解らないけど何か胸のあたりが納得していないんだ」
「綺麗だけど、まとまっているけど、何かが足りないんだ」
とマトを得ない感想を言って子ども達を困惑させてしまい
演出家としてあるまじきコメントをしてしまった僕は
自分の才能のなさにあきれ返り
トイレに立てこもってしまった。

そうとは知らずトイレに入ってきた
男性役者たち…
「平田さん、何が言いたかったのかな?」
「わからん!」
「俺も…、わからん」
「わんも!(俺も!)」
「……。」

トイレの個室で息をひそめているのは
僕である。
彼らの口から、次にどういう言葉がとび出してくるのか
ドキドキしながら息をひそめているばかり。

すると、しばしの沈黙の後一人の演者が言った
「わからんけど…、何かが足りないだはずよ、俺達。」
「であるな…」
「考えようや、もう少し…」
そして、がやがやとトイレを出て行った。

トイレに一人残された僕は、
また静かに自問自答。
そして、やっと気がついた。

「信頼」という名の絆
絶妙にして絶対的な「コツ無き距離感」
そして「使命」という名のエネルギー

気がついて自分の立っている
自分の位置を知った。


古の賢者は「さとる」という意味を
「悟りをひらく」と訳するだけでなく
「理解する、解かるということ」としている。

つまり「さとる」ということは、
「特別な力に目覚める」という意味でなく
「自分の力を知る、自らの力に気がつく」ということなのである。

「自らの命の使い方を覚(さと)るから」
「使命とは自覚するもの、自らが解かる」ということなのだ。

…見つけるのではない
探すのでもない
「気がつく」のである。

大切なことに
物事の根っこに
自らが気づく人になる
「気づきのスイッチ」を
心に宿すということ、
それが僕の得た僕の内(なか)の
「答え」なのである。


   南島詩人/平田大一


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Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 08:30