シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2008年09月10日

第45話『海の懐』(南島詩人・平田大一)

第45話『海の懐』(南島詩人・平田大一)
ワイキキの浜は懐の深い波を
僕の元に運んでくれる。

大きなうねりの波に身を委ねると
波に翻弄され軽やかに溺れながら
僕はこの地球のその懐(ふところ)の真ん中に
包み込まれている気持ちになった。


毎回苦しんでいた「時差ぼけ」解消法に
どうせ眠れない明け方まだ早い時間の
ワイキキの浜に行ってみようと気が向いたんだ。

陽がまだのぼらない海は寒いだろうから
海には入れないかも知れないけど
足ぐらいなら海水に浸けてもいいだろう
ホテルの大きなバスタオルで重装備
軽い気持ちでビーチまで向かったんだ。

ダイヤモンドヘッドの山陰は
まるで舞台のホリゾント幕に映る
ダイナミックなシルエット風景幕
紫色の深いホノルルの空に
黒々とそびえ立つ。

天然の照明と自然の音響。
やがて、大きく深呼吸…
僕の想いもシンプルになる。


思えば昨年の1月。
まだ何も「種さえ」も無かったこのハワイで、
無我夢中でつないできた潮の流れのような海の道が
大きな潮流となって今!もう少しで
現実のモノになっていくことを、
僕は感謝の想いを持って海に返したかったんだ。

昨年1月ハワイ島で預かった、
あの「ゴッド・ペレ」の約束の石を返すその日が
もう間近になっていることを感じていた。

ハワイの海の水を少し含んだ黒い小さなその石は、
小さく息をしているかのように、
嬉しそうにプチプチ鳴いた。


思いがけず海に吹く潮風が、
優しくって、あったかい。

朝がようやくあけ始めた海には
大勢の波乗りたち
気持ちよさそうに波に散っては
また果敢に波に向かうことの繰り返し。

ふと…
水平線に踊る白い波のうねりに
呼ばれている気がした。

僕もあの波乗りをしている
この島の人たちのように、
もっと気軽に海に飛び込んでみようか…

気がついたら僕は
大きなうねりの大きな海の懐に
飛び込んでいたんだ。

ワイキキの波に飲み込まれながら
一人納得する。

そうだ、そうだね。
僕は、まだまだ多くの奇跡を
作り出せねばならない。

まるで!
奇跡が普通の「イチロー」のように
この大きなプロジェクトも
飄々と乗り越えるんだ。

あの波乗りのように
涼しい顔して
この大波を気前よく乗り越えてみせるんだ。


南島詩人 平田大一




Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00