シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2008年07月16日

第37話『消費する文化、生産する文化』

第37話『消費する文化、生産する文化』
今の子ども達は恵まれすぎている。
お金があれば全てが揃う贅沢、
チョイスをすればいいだけの現実。
今の子ども達は生まれつきの「消費者」なんだ。

とある、トップ・マネージメント・セミナーでの
とある、企業の社長の意見に
ハッとさせられた。

会議の統一テーマは
「経営力と現場力が高める企業の生産性」

何故?僕が招聘されたのか?
統一テーマを眺めながら
じっくりと考えながらの新幹線。
一流企業の役員幹部が対象の経営者セミナー
の特別講師に招かれたんだ。

僕は子ども達が地域の伝承や伝説を
題材にして舞台に立つことで
地域を知り、自分を知り、やがては誰かに喜びを届ける
人間になっていく!
子どもが変わることで、大人が変わり、遂にはマチも変わる!
とその日、力説した。

日本を代表する企業の皆さん約150人。
歳を重ねた先輩達は「この国の未来」「次世代への道標」を
気にかけていた。

ビデオの中の子ども達「肝高く!」舞踊る。
演じ終わった後の挨拶の中での
「お父さん、お母さん、ありがとうございました!」
というコメントに、場内から期せずして拍手が起こる。
中には、目頭をおさえる人もいる。
講演会は大成功だった。
あの子達のお陰だった。

懇親会での語らいの席で興奮した表情の
その人が言ったんだ。

「今の子ども達は恵まれすぎている。
 お金があれば全てが揃う贅沢、
 チョイスをすればいいだけの現実。
 今の子ども達は生まれつきの『消費者』なんだ。」

一息つくと、続ける。

「私の子どもの頃はね『生きる』だけでも精一杯。
 今とは価値観がまるで違うんだよな。
 でも、今がそう言う時代だからこそ!
 だからこそ、君達の活動が貴重なんだよ。
 『消費者文化』に生きるあの子達が、
 立派に『生産』しているんだもの。
 感動という名の『こころ』の生産活動をしているんだもの。
 誰かに、ありがとうと言われる喜びを
 誰かに、ありがとうと言える歓喜びを知っているんだもの。」

トンボ帰りの新幹線。
この活動を始めて十年目。
僕は深い想いで車窓から外を見た。

「平和で豊かな今が悪いんじゃないはずだ。
 所詮、こういう機会を作り出せない大人の僕たちの
 責任が大きいだけなんじゃないか。
 僕は、もっともっと多くの子ども達に出会いたい!
 そして語りかけてあげるんだ。
 『タフになろうぜ!したたかに!
 遠慮しなくていいんだ。夢を語っていいんだ。
 出しゃばっていいんだ。自己主張が激しくってもいいんだ!』
 大きな声で、自分の存在を叫ぶんだ!」

そして、遠くのシマで
今日も健気に稽古をしている
南の島のカケラ達に会いたくなった。


僕は自分の道を歩いている。
自分の道を堂々と歩いている。
でも、それは
まぎれもなく!
あの子達のお陰だ。

 
    南島詩人 平田大一




Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00