シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2008年04月16日

第24話『シュガーロード』(南島詩人・平田大一)

第24話『シュガーロード』(南島詩人・平田大一)
風の声を聞く。
海から吹く潮風は優しい香りに包まれている。
ギラギラと照らす太陽の下
真っ黒な僕はひたすらペダルを踏んだ。

大学時代の夏休みは小浜島で過ごした。
海沿いのリゾートホテルに向かう
サトウキビ畑の一本道「シュガーロード」
全長1.4キロの直線道路を自転車で駆け抜ける

風がすり抜ける!
大きな口を開けたら島中の空気の塊が
ゴンゴン!と体中に飛び込んで来た。

「このシマの道はいったい何所に続いているのだろう…」
漠然と自問自答する。
はあ、はあ、はあ、はあ。
ペダルをこぐ。

「シマで生まれた僕が、東京で勉強するって、どういう意味があるんだろう」
飛んできた虫をよける!
はあ、はあ、はあ、はあッ。
前のめりになる。

「ああ!僕は、シマナイチャーなのか、ナイチャーシマなのか!」
はあ、はあ、はあ、はあ、はあッ、はあッ!
立ちこぎになる!これでもか!まだまだか!!
わけが解らなくなるくらい酸素不足。
青い空に叫ぶ!
ああああ!


気がついたらシュガーロード外れの砂浜
いつしか海に辿り着いていた。
涼しい風が海の向こうから吹いてきて
僕に優しく語り掛ける。
「焦らなくっても、いいんだよ」
「今のままでも、いいんだよ」

そして波の中から聞こえたんだ
「このシマの道は全て、海につながっている…」
と、確かに聞こえたんだ。



「前略  南のシマジマ」

答えが見つからない時は
波の数を数えましょう。

人は多分、
悩みたがりな生き物ではありますが
自然の営みほどではありません。

出口が見つからない時は
海を目指して走りましょう。

たかが知れている自分の悩み
自然の営みの中で
問いかけてみるといいでしょう。

答えはいつも風の中にある。
答えはいつも波の声にある。

「海は、『壁』じゃなくて『道』なんだ!」

18歳の少年の夏の思い出。
青い空と焼けた肌、そして、
真っ直ぐに伸びた「シュガーロード」。

南島詩人 平 田 大 一




Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00