シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在──  南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。  平田大一がつむぐコトノハと、KUWAこと桑村ヒロシの写真がつむぐ、「新・シマとの対話」。2015年4月15日より新連載スタート!(毎月1日と15日に更新予定)

2007年11月14日

第2話『珊瑚の杜に月の舟』(南島詩人・平田大一)

第2話『珊瑚の杜に月の舟』(南島詩人・平田大一)
   古文書に曰く「その神、12年に一度、月の船に乗りて舞い降りる
   その神の名は『シギラ』曰く『シギラ』とは
   『開く儀』なり『蘇生する儀』なり『再生の儀』なり
   その神の降り立つところ空と海とが邂逅う(であう)場所にあり
   海の彼方に現れる、蓬莱島とはこのことなり」
   <現代版組踊「THE SHIGIRA」序章>

昨年、旧暦3月3日、僕は、宮古島の海の上に立っていた。
文字通り「立っていた」のだ。海の上に。

その当時、大潮の3月3日に現れるという「八重干瀬(ヤビジ)」と言う名の、
珊瑚で出来た奇跡の島を舞台にした、新たな「物語」の誕生を担っていた僕は、
「一度その幻のシマを見に来ませんか?」という依頼者の誘いに、軽い気持ちで
応じ、海を渡ったのだ。そして、その圧倒的な生命力に愕然とした。
その自然に宿る不思議さに言葉を失った。島宇宙の神秘さに感動していた。

その夜僕は、八重干瀬での感動を「灯火」に、衝き動かされたかのように
一気にプロットを書き上げた。

   夜空に浮かぶ下弦の月の綺麗な大潮の夜
   海の中の珊瑚の杜に沢山の魚が集いあう
   誰かを待っているのかそわそわしている小魚たち
   黒と白のストライプ模様の海蛇たち
   大きな海亀の登場に導かれて光輝く月の舟が空より舞い降りてくる
   あがる歓声、沸き起こる拍手
   その歓声の中に降り立つ「シギラ」の神
   『八重干瀬(ヤビジ)生命の祝祭』が盛大に催される宮古島の海
   祭りは一番大きな盛り上がりをみせる中
   …物語の幕が開く。
   <現代版組踊「THE SHIGIRA」オープニング>

帰りの船中で気になる話しを聞いた。
珊瑚の天敵「オニヒトデ」の話しだ。

「でもね、平田さん…」話は続く。
「余り知られていないのですが、オニヒトデの卵を食べるのが、実は珊瑚なんです。
そして、その珊瑚を、またオニヒトデが食べる。何が善で悪なのか。自然界の摂理は、
人間の物差しで計ることは出来ません……」


   「前略
   南(パイ)のシマジマ
   丸い地球の島宇宙
      八重干瀬(ヤビジ)の海の珊瑚礁
   闘っているからこそ美しい」


南島詩人 平田大一




Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00