2008年03月05日
第18話『島人北上』(南島詩人・平田大一)

3月4日が来ると思い出す。
那覇のマチに降り立った日のこと。
那覇空港から浦添に向かう国道58号線
夕暮れの寒い空に小雨がぱらつき
タクシーの車窓から見えたマチは
小さな島から上京してきた小さな家族を
静かに見下ろすかのように
ただひたすらに沈黙していた。
タクシーのカーラジオからは延々と流れる「かぎやで風」
「さんしんの日」を賑やかに祝っていた。
賑やかであればあるほど
気分が憂鬱になっていったのは何故だろう。
毎週1回水曜日2時間だけの舞台稽古、
その演出が唯一のシゴト。
月10万円の僅かな稼ぎがあの頃の僕の全てだった。
あの頃のノートには率直な想い。
「書きたいことなど何も無い。またペンをとる」
またある日は、書き殴る!
「何も進まない一日。風呂場で泣く」
全てが心細い日々、風呂場で何度も泣いた日々。
僕は本当に悩める30歳だった。
忘れてはいけない、あの頃の僕を。
感傷なんかではなく、ただの昔話でもない。
今の「僕」につながるために、必要だったあの頃の「僕」。
誰も僕を知らなくっても、「僕」が「僕」を知っていた。
それが全て。
それが、僕の全てだった。
「前略 南のシマジマ」
悩みを解決してくれるのは、
彼氏や彼女や親や旦那や奥さんでもない。
所詮、自分自身。
「始まりも終わりも自分で決める。僕が歩くこの道に行き止まりなし!」
力強く書いた文字に、
今の「僕」が激しく反応した。
2008年3月4日。
東京帰りの那覇空港から、
あの日と同じように北上する58号線。
気づいたら、丁度9年が経っていた。
相変わらずの「さんしんの日」。
あの日と同じような小雨の日。
詩人の心は、
今も「北」を目指す。
「上」を目指して、伸びてゆく!
南島詩人 平田大一
Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00│Comments(0)│TrackBack(0)
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