シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在 ── 南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。(毎週水曜日更新)

2008年02月20日

第16話『熱と力』(南島詩人・平田大一)

第16話『熱と力』
今僕は、旅の空の下にいる。
韓国の舞台公演のためだ。

今回の舞台は日韓の文化の交流がテーマ
僕はそのイルボン(日本)チームの大きな責任を担う
「日本演者舞台総合演出」が
今回の僕のミッションだ。

全体を指揮する「黄(ファン)総合監督」との最初の会見は
もう寒い、2007年の9月だったか
韓国風の鰻屋でのことだった。

挨拶代わりのビール
そして意見交換のための韓国焼酎
とどめのもっと親しくなるための韓国風濁酒のマッコリ!

次から次へと出てくるキムチのオンパレード!
皿からキムチが無くなってくるとわかるや否や
「ヨギヨ!キムチ!ジュセヨ!」
監督が叫ぶより早く
新たなキムチがドカン!と
本当にドカン!と目の前に投げ出されるのだ…
ただ、ただ!目が点の僕だった。


「平田さん、韓国の料理は、頭で食べちゃ駄目よ!
 この!勢いで食べるよ!」
やたら饒舌な日本語でそういうと監督は
がははは!!と齢六十に近いその巨体を、大きく揺らした。

それにしても旅先で出会うアジアの友は
何故こうも迫力があるのだろう。

僕がまだ二十代の初めの頃
台湾に文化交流で出かけたときのことだ。
急遽、地元の台湾のある青年部との競演が決まった。
僕の踊りに合わせて「五獣拳」を舞うというのだ。

会場に着くと同時の「熱烈歓迎!」の横断幕に拍手。
聞けば、練習はしたものの上の幹部からは
「平田先生の演技の邪魔にならないこと!許可が出るまでは出演なし!」
とのおふれがあったらしい。
何だかみんなの目が異常に血走っていた。

時間が無いためのいきなりの通しリハーサル。
でも僕を乗せた神輿のようなものが危険で
演出そのものを変えねばならないとの思いがけない結論に
誰もがみんな無言でただ、涙を流していた。

その夜、僕は何だか眠れなかった。
彼らはこの準備にどれだけの時間を費やしたのだろう。
彼らのぎらぎら光る眼差しが無言の情熱が僕の心を衝き動かす。
そして、一晩考えた僕はある決断をする。

「僕は、みんなが作ってくれたあの神輿に乗ってみんなと競演したい!」
ほかでもない、僕自らが決めた結論に
運営側も従わずにはおれず突然の再度メンバー召集!
結局ぶっつけ本番の状態、でも起死回生の演目は熱い空気のまま
会場に響き渡る掛け声とともに、最高の演技を成し遂げたのだ。

僕は今でも彼らの「血走った眼差し」を覚えている。
あの若者達の「熱」と「力」が
アジアの国をここまで牽引してきたことも。

そして今!このシマにその二つが、最も欠けていることも。

「前略 南のシマジマ」
 
旅は色んなことを教えてくれる。
色んなコトを思い出せてくれる。

韓国の料理は真面目に考えながら食べてはいけない!
まずは、この目の前の辛いヤツからやっつけて
その勢いで舞台に上がるんだ!

僕は大きなキムチの葉っぱを何も考えず
丸ごと口に突っ込むと
「監督!美味いっす!」
と大きな口で叫んだ。


南島詩人 平田大一


Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00│Comments(0)TrackBack(0)

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