2008年02月13日
第15話『桟橋の風景』(南島詩人・平田大一)

別れの日。
見送りに来てくれたのは、
僕の身内の数人だった。
北風が強い島の桟橋。
空は、島の冬らしくどんよりと曇っていた。
やがて、離岸。
畑から直行ぎりぎり間に合った、
キビ刈の仲間たちが
桟橋に軽トラを乗りつけパラパラと降りてくる。
一人がとどかない声で何かを叫びながら、
「あっ!」という間に桟橋から海に飛び込むのが見えた。
すると、次々とみんなが海に飛び込む。
やがて、ぷかりと上げた顔で、ぶんぶん手を振ってくれた。
高速船の甲板から見える
親父の姿がどんどん小さな影になっていく。
もう小さな豆粒みたいになった見送りの中、
でも親父だけは最後まで手を振らないで
じっとこっちを見つめていた。
僕の唇から、自然と詩がこぼれ落ちる。
別れを惜しむ雨雲が
やがて二人を包むでしょう
水平線がくっきりと
空と海とを分けるでしょう
僕を乗せた小さなこの舟は
帰り舟か
それとも旅行く舟か
波しぶきが
二人の別れを煽ります。
高速船の大きなエンジン音に自分の声も聞こえない。
激しく噴き上げるジェットエンジンの大きな波の向こう側に、
僕のコトノハだけが、容赦なく吹っ飛んでいくのがみえた。
島はいつも変わらん
いつ帰ってきても変わらんさ
時流れても
このおじーが死んでも
島だけは島のまんま
いちまでぃん
いちまでぃん
島だけは
島のまんまさ
おじーは、泡盛もういっぱいぐいーっと
飲みほした。
あぁ、僕は本当に、島を出て行くんだな…
そう思ったら初めて涙が滲んだ。
一九九九年三月四日。
僕は八年間の小浜島での活動を終え、
活動拠点を沖縄本島に移した。
「前略 南のシマジマ」
あの時は、解らなかった。
残された者の悲しみが。
手を振る者の痛みが。
それぐらい、僕も必死だった。
寒い、島の冬の曇ったこんな空を見ると
思い出す。
あの日の桟橋に立っていた「島人」を。
飛び込んでくれた「仲間」を。
「へその緒を、自ら切り落とし、離岸せん」
島を出ると決めた、その選択に後悔は微塵も無い。
ただ!引き止めなかった「心意気」に感謝したい。
南島詩人 平田大一
Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00│Comments(0)│TrackBack(0)
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