シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在 ── 南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。(毎週水曜日更新)

2008年07月30日

第39話『想い』(南島詩人・平田大一)


「太陽は王様の象徴
 その力、垂直に向かい」

「龍神は水をつかさどる
 そのパワー、水平に広がり」

「大地は人をカタチ取り
 その想い(ウムイ)四方にあまねく」

初めて出会う首里城の
その精神性の高さに
思わず唸ったんだ。

観光客とは違う視点で
このグスクを見てみたら
「不思議」のオンパレード!
「祈り」のフォートレス(基地)!
「ウムイ〜想い」の宝庫!

ああ、
やっぱり全てに意味があるんだな。

僕はこの夏行われる舞台の
実際の現場である首里城に
出演する子ども達と、ともにいた。

舞台を作るにあたっての
首里城見学。
城探検ガイドをかってでてくれた
「山城氏」の熱い言葉が
僕らの胸も熱くする。


「いいですか!皆さん。
 世界遺産に認定されたと言うことは
 世界の中でもこの文化財群は
 琉球特有の文化として
 認められたということなんです。
 琉球の文化はオリジナル性の高い
 稀な文化だと世界が認めた証なんです!」

 そしてこう言葉を続けた。
 「自分達のシマに、文化に、いや!自分自身に誇りを持とう。
  皆さんの取り組みは世界に通じるモノなんだよ。」

生きた学びをさせてあげたい!
僕はいつも、そう思う。
学びを受ける子ども達は
若ければ若いほどに
その吸収力も凄いんだ。

学力も確かに必要だろう
でも、それ以上にもっともっと大切なことは
自分の立つ根っこに対して「愛」を持てるか!
強き「想い(うむい)」があるか!
ということ。

そう。
僕は知っている
生まれたマチを大事に思う人は
必ず、自分自身も大事に出来るんだ。

自分のマチへの愛情が
揺ぎなき自分の生き方の全てになるんだ。


首里城には舞い踊る龍がいる
舞い飛ぶ鳳凰がいる
守護する獅子がいる。

そしてその中に
笑顔の子ども達もいた。

南島詩人 平田大一
  

Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00Comments(1)TrackBack(0)

2008年07月23日

第38話『グスク』(南島詩人・平田大一)


天に向かって広げた手は
風の行方をさがしていたのか、
そこにただ屹っているだけ、
それだけで天とつながる。

古の者よ
この地にどのような
志を興したのか!

シン!と一人
「静寂」の中、佇んで
グスクの真ん中に立っている。

誰が手向けたのか
線香の煙
空気の流れを
教えるかのように
木々の間から見える碧い空へ
昇って消えていった。

古の志
古の情熱
古の夢

感じて
僕は、今を生きる。

聖地は何ゆえ
聖地であるのか

地の持つ力ゆえ
祈り満ち溢れるがゆえ
人の念い天に届くゆえ
あるいは!
古の夢「今」も生きるがゆえ。

風が吹く。
蝉が鳴きやみ
気がついた。

「静寂」などではなく
実は蝉の大音声の
中にいたこと。

気がついて
ぐるり
城の址を見渡した。

我が胸の中の聖地と
共鳴する
この地から
新たなる志を発信する。

その真ん中には
そう、いつも、
「人」がいた。

天のカタチをした
「人」がいた。

人ありて
廃墟はグスクに
なるだろう。

束の間の「静寂」を破るかのように
蝉!
また吼え始める。

南島詩人 平田大一  

Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 06:00Comments(1)TrackBack(0)

2008年07月16日

第37話『消費する文化、生産する文化』


今の子ども達は恵まれすぎている。
お金があれば全てが揃う贅沢、
チョイスをすればいいだけの現実。
今の子ども達は生まれつきの「消費者」なんだ。

とある、トップ・マネージメント・セミナーでの
とある、企業の社長の意見に
ハッとさせられた。

会議の統一テーマは
「経営力と現場力が高める企業の生産性」

何故?僕が招聘されたのか?
統一テーマを眺めながら
じっくりと考えながらの新幹線。
一流企業の役員幹部が対象の経営者セミナー
の特別講師に招かれたんだ。

僕は子ども達が地域の伝承や伝説を
題材にして舞台に立つことで
地域を知り、自分を知り、やがては誰かに喜びを届ける
人間になっていく!
子どもが変わることで、大人が変わり、遂にはマチも変わる!
とその日、力説した。

日本を代表する企業の皆さん約150人。
歳を重ねた先輩達は「この国の未来」「次世代への道標」を
気にかけていた。

ビデオの中の子ども達「肝高く!」舞踊る。
演じ終わった後の挨拶の中での
「お父さん、お母さん、ありがとうございました!」
というコメントに、場内から期せずして拍手が起こる。
中には、目頭をおさえる人もいる。
講演会は大成功だった。
あの子達のお陰だった。

懇親会での語らいの席で興奮した表情の
その人が言ったんだ。

「今の子ども達は恵まれすぎている。
 お金があれば全てが揃う贅沢、
 チョイスをすればいいだけの現実。
 今の子ども達は生まれつきの『消費者』なんだ。」

一息つくと、続ける。

「私の子どもの頃はね『生きる』だけでも精一杯。
 今とは価値観がまるで違うんだよな。
 でも、今がそう言う時代だからこそ!
 だからこそ、君達の活動が貴重なんだよ。
 『消費者文化』に生きるあの子達が、
 立派に『生産』しているんだもの。
 感動という名の『こころ』の生産活動をしているんだもの。
 誰かに、ありがとうと言われる喜びを
 誰かに、ありがとうと言える歓喜びを知っているんだもの。」

トンボ帰りの新幹線。
この活動を始めて十年目。
僕は深い想いで車窓から外を見た。

「平和で豊かな今が悪いんじゃないはずだ。
 所詮、こういう機会を作り出せない大人の僕たちの
 責任が大きいだけなんじゃないか。
 僕は、もっともっと多くの子ども達に出会いたい!
 そして語りかけてあげるんだ。
 『タフになろうぜ!したたかに!
 遠慮しなくていいんだ。夢を語っていいんだ。
 出しゃばっていいんだ。自己主張が激しくってもいいんだ!』
 大きな声で、自分の存在を叫ぶんだ!」

そして、遠くのシマで
今日も健気に稽古をしている
南の島のカケラ達に会いたくなった。


僕は自分の道を歩いている。
自分の道を堂々と歩いている。
でも、それは
まぎれもなく!
あの子達のお陰だ。

 
    南島詩人 平田大一  

Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00Comments(0)TrackBack(0)

2008年07月09日

第36話『空に舞う祈りの詩』(南島詩人・平田大一)


明け方、早い時間
海にきた。

走り続けた
靴を脱ぎ捨て
潮風に向かって
大きく深呼吸

無性に
海に還りたくなったんだ。

心静かに
海につかる
ぬるい海水に
頑なだった気持ちも
ほぐれていく。

水平線に浮かぶ雲は
夏のカタチ
眩しい陽ざしに
背筋もシャンと伸びる。

大きな舞台を終わらせた
かかわる時間が長いプロジェクト
山を越えた後の
自分へのご褒美なんだ。

風が優しく
吹いていく

僕の頭の上を
勢い余った燕(つばめ)が
ピーッと駆けていった。

波に揺られながら
自然と口をついて出た「歌」は
今、手懸ける舞台の「祈りの歌」。


山の向こう 鷲が舞うと云う
羽を広げ  風をつかむ

海に映る雲に 明日を占えば
己が生命の  声のままにと

尚巴志よ!鬼鷲よ
民を結ぶ 道を征け

尚巴志よ! 翔べ、尚巴志よ!
世界に鳴響む(しけにとよむ) 
魂ぬ詩(ぬちぬうた)

  
潮風に乗った声は
時代も島も越えて
どこまでも碧い宇宙(そら)に
飛んでいった。

南島詩人 平田大一  

Posted by 平田大一(Hirata Daiichi) at 00:00Comments(0)TrackBack(0)