2008年06月25日
第34話『手紙』(南島詩人・平田大一)

気がついたら夏。
高い雲の夏が来た。
島の家、大きな窓から見える雲のカタマリ
ゴウンゴウンと唸りを上げて
凄い勢いで流れていく。
久しぶりの生まれ島は
もう夏の祭りの季節。
気がつけば遠くで太鼓の音がする。
あの雲のせいか、
この暑さのせいか、
海に流した「手紙」を思い出す。
遠い記憶の彼岸の空に
想いをつづった
あの夏の便り。
前略
再会を約束して
別れましょう
散って彩る花もあるけれど
今はまだあなた
サヨウナラ
とは言えません
再会を約束して
別れましょう
涙もひとつこぼせたら
素敵な思い出
拾い集めてかき集め
夜空を飾る星にして
あなたに幸いばかりがあるように
祈りましょう
再会を約束して
別れましょう
散って彩る花もあるけれど
今はまだあなた
サヨウナラ
とは言えません
再会を
再会を
約束して別れましょう
押しては返す
あの波のように
僕たちは何度もここで
廻りあう。
夕暮れの海に出てみれば
流れ着いた「思い出」が幾つもあって
僕は刹那!
少年の頃の僕になる。
白い月が
笑っていた。
南島詩人 平田大一
2008年06月18日
第33話『根を張る、翼を持つ』(南島詩人・平田大一)

シマに着いたとき港はまだ暗い
早朝4時10分だった。
「ようこそシマに!」
暗い港に立つ素敵な笑顔の
フクイさんに迎えられ
僕は始めての島「長崎県宇久島」に降り立つ。
福岡の港を午後11時過ぎに出港
「太古」という名の大型フェリーは
大きなうねりの暗い海の上を滑る様に走る。
重力が前に後ろに移動する。
時には背後に引き込まれる大海原を進む独特な感覚は
記憶を過去に誘っていくのか
少し重い頭で床に横になったんだ。
宇久島は周囲が約40キロくらい。
平家盛公(たいらのいえもりこう)ゆかりの島、
歴史の香りが五島列島を渡る風に乗って
島に降り立った僕のまだ起ききれていない
体をぐわんぐわん揺さぶった。
宿泊所で仮眠を取り
早朝の島めぐりに出かけた。
頭が重い。
まるで「時差ぼけ」になってしまったみたいだ。
「海士」と書いて「あまんし」。
それは、家盛公を助けた鮑(あわび)取りの漁師を
「海の武士」と認めたことからその位(称号)を頂いたとか。
気高き「海人」の島の岬「船隠し崎」に立つと、
僕の足に力が入った。
三浦神社に自生しる「巨大ソテツの樹」の前に
立ったとき、踊るようなそのうねる幹に
「ソテツダンス…」と呟く。
ふるさとの歴史に誇りを持てる物語が
こんなにたくさんあるんだ。
フクイさんが言う。
「平田さん、隣島のあの島は住民の全てが青い目に金髪
異国の風貌をした島人が住んでいます。
見た目がそうであるというだけで、勿論、日本人ですが…」
島人よ。
海を渡ると良く分かる。
島には島の数の分だけ島の顔がある。
島の事情がある。
島の物語がある。
足を運んで色んな島を渡り歩かなければ
解らないことが多い。
僕たちにとって一番怖いのは
「心の孤島」「精神の離島」になることだ。
「島に根を張れば張るほどに
心は翼を持つが如く」
長崎県宇久島。
僕の中の心の地図に
沖縄の直ぐ近くに描かれた。
南島詩人 平田大一
2008年06月11日
第32話『星のゆりかご』(南島詩人・平田大一)

最近
「星」にまつわる
想いにあふれ
今夜もまた
「星」にまつわる
想いをひとつ。
東の空を
遠く眺めておりました。
どこからか聞こえてくる
水平線の大きな大きな
あの「月の歌」を
私はゆっくり目を閉じて
聞いておりました。
優しく沈む太陽が
奏でる音楽と共鳴し
時には見えない
風の旋律に導かれて
私の胸に確かに響くあの歌は
私とあなたを結んでくれるようでした。
遠く離れて暮らす
二人の間で響きあいながら
不思議な「今」を紡いでいくように
優しさにあふれた歌でした。
東の空を
遠く眺めていたら
聞こえてきたのです。
大きな大きな
あの「月の歌」が
青々としたそらに
「月」と「太陽」
二つの星はその深き胸に抱かれて
見えない糸で
結ばれているのでしょう。
たとえ
一つになれない運命(さだめ)と
決まっていても
私は自分の歌を歌うのです。
ありがとう、
ありがとうね…
私はあなたに照らされて
あなたは私で自分を確認する。
遠きふるさと
シマ想い
みちはつなぐ
明日と今を
天(そら)が歌えば
波は舞い
星のユリカゴに
抱(いだ)かれて眠る
星のユリカゴに
抱かれて眠る
南島詩人 平田大一
2008年06月04日
第31話『流れ星』(南島詩人・平田大一)

君の島のほうに、「流れ星」が落ちていくのが見えた。
僕は「サバニ」に乗って、その星をひろいに海に出る。
君に、あの星をプレゼントしよう…。
真っ黒い海の道を僕はひたすらに舟を走らせる。
あの星をどうしても君に届けたい、そして僕は
君に笑顔を取り戻してほしかった。
途中、海に浮かぶ大きな「三日月」を見つけた。
まるで海に浮かぶ、「船」のようだ。
「すみせん、ここに星が落ちてきませんでしたか?」
僕は聞いた。
「いいや、知らんな…。」
ぷかりぷかりと三日月の船は海の上を泳ぎながら
僕の前から遠ざかっていった。
今度は海で眠るマンタを見つけた。
「あの、すみません。ここに、星が落ちてきませんでしたか?」
僕はマンタが不機嫌にならないか心配しながら聞いた。
「ああ、びっくりした。驚かすなよ。寝てたんだ。」
マンタは少し飛び上がって、それから
「ここには、ないよ。」と僕に告げた。
真っ黒い海の上に気持ちよさそうに浮かんでいたマンタは
ちゃぷん、と海の底に帰っていった。
僕はすっかり途方に暮れてしまった。
勢い込んで海に飛び出したのに
探すべきその星は見つからない。
さて…、どうしよう。
僕は君の笑顔を思った。
そして、大きく深呼吸して夜空を仰いだ。
見るとさっきの「三日月」がその夜空にあった。
…全く、仕方ね〜な〜
僕の頭の中で「三日月」の声が聞こえた。
すると、その船のカタチをした月から
優しい光が降りそそいだ。
あ…、僕は息を呑んだ。
黒い海の上に、ぼんやりとした光の道が見えてきた。
「…星に続く道だ」
僕ははやる気持ちを抑えてゆっくりと
サバニを走らせ始めた。
三日月の光を浴びてキラキラと光る星。
月明かりで輝く海の道は、
きっと流れ星まで僕を導いてくれる。
遠くの水平線でマンタがジャンプする。
パチャッ!
おおい、お前の捜し物はここにあるぜい!
マンタの声は海風に乗って、
僕にもハッキリと聞こえた。
もうすぐ流れ星に辿り着く
その星を君に届けよう
君はこの星に、幾つお願い事をするんだろう…
やっと、君の笑顔が僕にも見えた。
南島詩人 平田大一




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