シマとの対話

──沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在 ── 南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。(毎週水曜日更新)

2008年04月30日

第26話『雨に煙る芳香』(南島詩人・平田大一)

第26話『雨に煙る芳香』
突然の雨に追われるように
シマに着いたんだ、最終便。

「5月」目前の桟橋は、
雨雲のせいか少し寒くて薄暗い…
何所となく淋しい感じがするんだ。

大きく揺れる舟
接岸の飛沫(しぶき)に
シマも揺れた。

雨に煙るシマの桟橋「刹那!」
バリ島の空港「デンパサール」に降り立った時
強烈なアジアの匂いに胸がキュンッ!と
切なくなったことを思い出した。

ああ…
遠くに来たんだな
と小さく呟いた日のことを
僕は昨日のように憶えている。

それが、「香り」が持つ特別な力なのかもしれない

この季節。
シマは一番彩りも鮮やかな「芳香(かおり)」に
抱かれている。
月桃の花、梯梧の花、ニッパヤシの花、伊集の花
花々の開花とともに
香りが満ちるシマに大きく深呼吸した。


「前略 南のシマジマ」

 ところで…
 昨日降りた石垣島の空港は
 牛舎の匂いがした。

 それはそれで仕方ないことで
 どうこうではないけれど
 少しガッカリしたんだ。

 生活と憧れのバランスをどうとるか!

 観光立県だからという訳でなく
 変わりゆくシマの「今」の流れに
 大切な「この島のバランス」を考えてしまったんだ。

 香りに包まれたシマであり続けてほしい!

 例えば僕なら
 そんなシマなら住んでて良かったと
 絶対思うんだけどな。


 三拝云
 南島詩人・平田大一  

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2008年04月23日

第25話『ターフ フラッグ リリック』(南島詩人・平田大一)

第25話『ターフ フラッグ リリック』
紐がはずれた
ターフはまるで
フラッグみたい風に踊る

遠くの
歓声
永遠の
歌声

さあ背伸びしろ!
シマに若夏(ナツ)が来た
待ったなしの初夏(ナツ)が来た

時々差し込む
ドキドキ眩しい
空に雲
せわしく走るけど

吹けよシマ風
明日に飛び立つ
このシマの鳥
太陽(てぃだ)に向かって
渡るシマ風

小さな
世界
旅して
理解

そうだ
ここが僕らの
永遠の
約束の場所なんだ

胸の誇りを
象徴するよ
ターフ フラッグ風に舞う

風に脈打つ
シマの鼓動
ターフ フラッグ夢に逢う

明日の息吹を
シマの息吹を
この胸いっぱいに受け止めて
ターフ フラッグ
紡ぐ「言ノ葉」

饒舌なるかな
若夏(うりずん)の風

 
 「前略 南のシマジマ」

  「若夏」と書いて
  「うるずん」と読むらしい。
  「潤いが、染まる、染み込む」と言うのが
  語源だとか。

  キラキラ眩しい
  光の粒子を
  パッと一掴み!
  紙の上に転がして

  拾い集めた
  「風の声」
  並べてみたんだ

  日よけのターフが
  僕の城の御旗なり 

南島詩人/平田大一  

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2008年04月16日

第24話『シュガーロード』(南島詩人・平田大一)


風の声を聞く。
海から吹く潮風は優しい香りに包まれている。
ギラギラと照らす太陽の下
真っ黒な僕はひたすらペダルを踏んだ。

大学時代の夏休みは小浜島で過ごした。
海沿いのリゾートホテルに向かう
サトウキビ畑の一本道「シュガーロード」
全長1.4キロの直線道路を自転車で駆け抜ける

風がすり抜ける!
大きな口を開けたら島中の空気の塊が
ゴンゴン!と体中に飛び込んで来た。

「このシマの道はいったい何所に続いているのだろう…」
漠然と自問自答する。
はあ、はあ、はあ、はあ。
ペダルをこぐ。

「シマで生まれた僕が、東京で勉強するって、どういう意味があるんだろう」
飛んできた虫をよける!
はあ、はあ、はあ、はあッ。
前のめりになる。

「ああ!僕は、シマナイチャーなのか、ナイチャーシマなのか!」
はあ、はあ、はあ、はあ、はあッ、はあッ!
立ちこぎになる!これでもか!まだまだか!!
わけが解らなくなるくらい酸素不足。
青い空に叫ぶ!
ああああ!


気がついたらシュガーロード外れの砂浜
いつしか海に辿り着いていた。
涼しい風が海の向こうから吹いてきて
僕に優しく語り掛ける。
「焦らなくっても、いいんだよ」
「今のままでも、いいんだよ」

そして波の中から聞こえたんだ
「このシマの道は全て、海につながっている…」
と、確かに聞こえたんだ。



「前略  南のシマジマ」

答えが見つからない時は
波の数を数えましょう。

人は多分、
悩みたがりな生き物ではありますが
自然の営みほどではありません。

出口が見つからない時は
海を目指して走りましょう。

たかが知れている自分の悩み
自然の営みの中で
問いかけてみるといいでしょう。

答えはいつも風の中にある。
答えはいつも波の声にある。

「海は、『壁』じゃなくて『道』なんだ!」

18歳の少年の夏の思い出。
青い空と焼けた肌、そして、
真っ直ぐに伸びた「シュガーロード」。

南島詩人 平 田 大 一  

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2008年04月09日

第23話『小さな独立記念日』(南島詩人・平田大一)

第23話『小さな独立記念日』
もうここから先は来ないでいい!
と言う。

一人で歩いていけるもん!
と言う。

唖然とした僕の顔を尻目に
小さな体の君は
大胆な足取りで
校門の中に颯爽と消えていった。

あれは入学式の日。
学校の保護者説明会かなんかで
僕が珍しく出席した時のこと。

僕は愕然としたんだ!
「担任の先生って、勝手に決められてしまうんだ。」
って言う当たり前を、始めて気がついたんだ。

親というものはそのシステムの前では「無力!」
ゆえに、祈るしかないことに
僕は初めて気がついたんだ。
「ああ、どうか。良い先生に出会いますように。
 素敵な友達に、恵まれますように。」

そうして、よもや、「涙」流している姿を見たら
ハラハラ、ドキドキしては
何も言えず、ただウロウロしている
ちっぽけな親に成り下がるンだ。

あれから6年。
君も「高学年」になった。
今年の僕もまた祈るんだ。
「良い出会いに溢れていますように。」と、
そっと、そっと、祈るんだ。



前略 南のシマジマ
 
新緑の眩しい公園を
余所行きの格好をした小さな紳士、淑女
眩しい緑に負けない笑顔で
歩いていく姿を見た。

体の割には大きなランドセル
真新しいピカピカなランドセル
背負って歩く大勢の紳士、淑女。

どうか!今日は
その小さな命の一つ一つが
素敵な出会いに恵まれた
始まりの記念日になりますように。

僕は心の底から
そう祈るんだ。

南島詩人 平田大一  

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