2007年11月28日
第4話『瑞兆(ずいちょう)』(南島詩人・平田大一)

「幸運」を手繰り寄せたいのなら
「きざし」を知るべきだ。
その鳥は「カンムリ鷲」と呼ばれていた。
「島の誇り」のような鳥だった。
いつも高い空に一羽、甲高い声で
時折鳴いては弧を描いて優雅に舞っていた。
ある日。
空にいるはずのその鳥が電線にいた。
寒い島の冬の夕方のことだ。
ひゅるひゅると吹く寒風にぐっと耐えながら
ボロボロの羽を抱えるように一羽
何処か遠くを見ていた。
いつのも気高さが微塵もないくらい見た目はボロボロだった。
偶然、否!
明らかに何かの意思で僕とその鳥の眼差しが一瞬遇った。
刹那!大きく見開かれたその眼にドキッとした。
眼光は鋭く、でも優しく、僕をじっと見つめている。
僕の乗った車が通り過ぎるまでの間の一瞬の邂逅。
鳥の目は確かに「今」を生きていた。
ボロボロのその羽は全然恥ずかしくもない!と言った感じで。
通り過ぎてしばらくして
僕の胸に不思議な声が聞こえた。
その声は一言「前に進め…」と僕に囁いていた。
実は迷っていたんだ。
新たな挑戦のための決断を。
僕は、迷っていたんだ。
自分のするべき「使命」に気づきつつも
向き合うことがこわかったから。
1999年3月4日。
眼光鋭いその眼差しに導かれ
僕はシマを出ることを決意した。
カンムリ鷲。
僕の「瑞兆」の一つ。
前略 南のシマジマ
今朝見た虹は我が使命の証
何でもない物を
瑞兆(きざし)と思える
それが賢者の証
南島詩人 平田大一
2007年11月21日
第3話『天を衝く!』(南島詩人・平田大一)

島に立つ勢い
その先(そら)
天を衝け
海に根付くマングローブを見ると
その生命力の力強さに感嘆する。
海水と淡水の異なる水が混ざり合うからこそ強いのか。
異なるモノ同士との鬩(せめ)ぎ合い。
新たな「命」が生まれる瞬間はこういう
厳しい環境の中であったりすると思う。
そして僕は、こういう「小さな命」の伸びようとする勢いに
最も「生命力」を感じる。
島でまだ暮らしていた頃、僕は毎日のように浜におりては
力強い「命」の息吹をよく見に行った。
「旅する種」とも呼ばれているマングローブの奇跡を
体に刻み込むかのように僕はその「命」の前で
大きく深呼吸をしていた。
そしてマングローブの見える海の向こうにはいつも、
大きな西表島の山々が見えた。
答えはいつも「島の中」にある。
全ての答えがこの島にあった。
サトウキビ畑に吹く風の中に
夜空に咲く花のような星々の輝きに
天に向かって海に立つ小さな命の勢いに
僕は自問自答の答えをいつも見つけていたんだ。
「前略 南(ぱい)ぬシマジマ
校門無き学びの場
僕らがいつも立つところ」
南島詩人 平田大一
2007年11月14日
第2話『珊瑚の杜に月の舟』(南島詩人・平田大一)

古文書に曰く「その神、12年に一度、月の船に乗りて舞い降りる
その神の名は『シギラ』曰く『シギラ』とは
『開く儀』なり『蘇生する儀』なり『再生の儀』なり
その神の降り立つところ空と海とが邂逅う(であう)場所にあり
海の彼方に現れる、蓬莱島とはこのことなり」
<現代版組踊「THE SHIGIRA」序章>
昨年、旧暦3月3日、僕は、宮古島の海の上に立っていた。
文字通り「立っていた」のだ。海の上に。
その当時、大潮の3月3日に現れるという「八重干瀬(ヤビジ)」と言う名の、
珊瑚で出来た奇跡の島を舞台にした、新たな「物語」の誕生を担っていた僕は、
「一度その幻のシマを見に来ませんか?」という依頼者の誘いに、軽い気持ちで
応じ、海を渡ったのだ。そして、その圧倒的な生命力に愕然とした。
その自然に宿る不思議さに言葉を失った。島宇宙の神秘さに感動していた。
その夜僕は、八重干瀬での感動を「灯火」に、衝き動かされたかのように
一気にプロットを書き上げた。
夜空に浮かぶ下弦の月の綺麗な大潮の夜
海の中の珊瑚の杜に沢山の魚が集いあう
誰かを待っているのかそわそわしている小魚たち
黒と白のストライプ模様の海蛇たち
大きな海亀の登場に導かれて光輝く月の舟が空より舞い降りてくる
あがる歓声、沸き起こる拍手
その歓声の中に降り立つ「シギラ」の神
『八重干瀬(ヤビジ)生命の祝祭』が盛大に催される宮古島の海
祭りは一番大きな盛り上がりをみせる中
…物語の幕が開く。
<現代版組踊「THE SHIGIRA」オープニング>
帰りの船中で気になる話しを聞いた。
珊瑚の天敵「オニヒトデ」の話しだ。
「でもね、平田さん…」話は続く。
「余り知られていないのですが、オニヒトデの卵を食べるのが、実は珊瑚なんです。
そして、その珊瑚を、またオニヒトデが食べる。何が善で悪なのか。自然界の摂理は、
人間の物差しで計ることは出来ません……」
「前略
南(パイ)のシマジマ
丸い地球の島宇宙
八重干瀬(ヤビジ)の海の珊瑚礁
闘っているからこそ美しい」
南島詩人 平田大一
2007年11月07日
第1話『始まりの詩』(南島詩人・平田大一)

「始まり」はいつも、心が引き締まる。
残された「者」への想いを振り切るかのように
小さな島の桟橋で、僕は大きく深呼吸、
新たな始まりの朝に立ちつくす。
感傷の潮騒は遠ざかり、おぼろげな「確信」だけが、
ゆらゆらと揺れる波の背中に浮き沈み
寄せては返す飛沫(しぶき)のような自問自答のその刹那!
僕は重い雲間から差し込む陽の光を目撃したんだ。
常に始まりの詩を奏でる自然の調べ、その大迫力に胸が奮えた。
気づけばそこにある陽だまりのように
落とした目線その先にあるあの月光のように
ああ!この僕も、激しさと優しさを持ち合わせ
誰かの心に寄り添える「僕」でいよう。
新たな「自分」の始まりに
新たな「この頁」をつづるんだ。
「前略 南(ぱい)ぬシマジマ
遠い空の下で書くこの便りが
誰の元に届くのか僕は知らない
寒い空の下で頑張る君のもとに
必ず降りそそぐあの陽の光のように
届いてくれたらそれでいい」
南島詩人 平 田 大 一




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